ニコラさんたちが、自分たちでは弓でブルーフロッグは狩れないって言ったでしょ?
だからお母さんは、それだったら狩りやすい鳥とかを狙った方がいいねって、どんな所を探せばいいのかを教えてあげたんだ。
「ああいう枝がある場所は覚えておいた方がいいわよ。獲物になる鳥がよくとまっているから」
「あの枝ですか?」
「そう。あの枝は太さが十分ある上に真上が多くの葉でおおわれてるでしょ? 上から肉食の鳥に見つかりにくいから、素早く飛び立てない鳥でも比較的安心して休む事ができるのよ」
歩いた跡が残る動物と違って、鳥は飛んでるから森の中じゃ探すのが大変なんだよね。
でも鳥が休みやすい枝を覚えとけば、そこを見て回るだけで見つけられるでしょ。
だからお母さんは、そういう枝を見つけては、ああいう枝がある場所はちょっと覚えておいてねってニコラさんたちに教えてあげてったんだ。
「後は、ここみたいに空が大きく見える場所も覚えておいた方がいいわよ。こういう所では地上の小動物を狙う鳥が狩れるから」
お母さんはそう言うとね、手に持ってた弓をお空に向けて撃ったんだよ。
そしたらさ、上からどさっておっきな鳥が落ちてきたんだ。
「ほら、こんな風にね」
「いや、それができるのはグランリルの狩人くらいですよ」
その落ちてきたおっきな鳥を拾ってきながら、バリアンさんがお母さんにこんな事、普通はできないですよってあきれたお顔で言ったんだ。
だから僕、そうなの? って聞いてみたんだよ。
そしたらさ、飛んでる鳥を狩る冒険者なんてほとんどいないよって言われちゃった。
「飛んでいる鳥、特に地上の獲物を狙っている鳥は自分に向かってくる矢に気が付くのも早いだろ? だからよけられやすいし、何より高く飛んでいる鳥を撃ち落とそうと思ったら、それだけ威力のある矢を飛ばす必要があるんだ」
「ええ、そうね。でも視界の外、こんな風に飛んでいる鳥の後ろから撃てば気付かれる確率はずっと低くなるわよ」
お母さんはバリアンさんからおっきな鳥を受け取るとね、ニコラさんたちにほらって見せてあげたんだよ。
そしたらさ、ほんとに後ろの方から矢が刺さってて、みんなびっくりしたんだ。
「あの瞬間に、鳥が飛んでいる向きまで見えていたんですか?」
「ええ。まぁネタ晴らしをすると、狩場の説明をしながら見ていたらちょうどいいのが飛んでたから撃ち落としただけなんだけどね」
お母さんはそう言って笑ってたんだけど、バリアンさんはそれでもこれは凄い事なんだよって言うんだ。
「見つけた瞬間に狩れると判断し、瞬時に弓を構えてはなった矢を飛んでいる鳥に当てる。弓の初心者にマネできる事ではないですね」
「そうね。でも、こういう所が狩場になるっていうのを見せるには、今みたいに実際に買って見せるのが一番でしょ?」
今やった事の真似をする必要は無くって、とりあえずこういう場所に来たらまず木の陰から空を確認。
そしてもし鳥が飛んでいたらその向きを確認して、しっかりと狙って撃てば初心者でも十分に狩れる可能性はあるんだよって言うお母さん。
「弓の威力だって、昨日買ってあげた弓なら十分その威力があるはずだもの。ちゃんと練習を積めば、ニコラさんたちでもできるようになるはずよ」
「はい、がんばります」
ニコラさんたちはそう言って頷きながら、飛んでる鳥が狩れるように練習しますってお母さんに約束してくれたんだ。
それからお母さんやお姉ちゃんに見つけてもらった遠くにいる鳥を狙って、ニコラさんたちが弓での狩りを練習。
その殆どが失敗だったけど、とりあえず全員が1匹ずつくらい狩れたところで、キャリーナ姉ちゃんがこんな事を言い出したんだよ。
「ルディーン。この森には銀色のきれいな鳥がいるんでしょ? 私、それが見てみたい」
「銀色の鳥? ブレードスワローの事?」
「うん、それ!」
ブレードスワローって、お父さんと一緒に狩りに行ったりロルフさんたちと一緒にベニオウの実を採りに行った時には出会ってるけど、キャリーナ姉ちゃんと一緒に森に来た時には一度もあってないでしょ?
だからお姉ちゃんは、せっかく僕と一緒にイーノックカウの森に来たんだから魔法で探してって言うんだ。
「いいけど、でも探したって近くで見れないかもしれないよ」
「えー、なんで?」
「だってさ、今日はみんなで狩りに来てるんだもん。ブレードスワローは狩りに来た人を見たら、すぐに逃げちゃうんだよ」
前にロルフさんたちとベニオウの実を採りに来た時、すぐ近くにブレードスワローがいてお父さんがびっくりしたんだよね。
何でかって言うと、普通はそんなに近くに来るまでに飛んで逃げちゃうからなんだって。
でもね、その時は僕たち、ベニオウの実を採るために来てたからなんかを狩る気が無かったでしょ?
だからブレードスワローは逃げなかったんじゃないかなぁってお父さんが言ってたのを、僕はキャリーナ姉ちゃんに教えてあげたんだ。
「そっか。今日はもう狩りをしちゃったし、見つけても逃げて行っちゃうかもしれないね」
「ん? 近くで見たいなら、狩ればいいだけじゃないのか?」
そしたらキャリーナ姉ちゃんは、逃げちゃうならダメだねって言ったんだけど、それを聞いたお父さんが狩れば近くで見られるよって。
「あっ、そっか! 狩ればいいんだった」
「いやいや、カールフェルトさん。狩ればいいよって、流石にグランリルの弓の名手でも、ブレードスワローを狩るのはそう簡単じゃないですよ」
だから僕、そっか! そういえばそうだねって思ったんだけど、それを聞いたバリアンさんがいくらお母さんでもそれは難しいんじゃないかなぁって言うんだよ。
でもね、そんなバリアンさんにお父さんは、不思議そうなお顔でこう聞いたんだ。
「ロルフの爺さんから聞いてないのか? ブレードスワローは確かに弓で狩るのは難しいが、魔法でなら簡単に狩れるんだぞ」
「そうなんですか!?」
弓矢はまっすぐ飛ばすためについている羽根のせいで飛んでく時に音がするけど、魔法はほとんどしないでしょ。
だから遠くから撃ってもブレードスワローが気付かないんだよって教えてあげると、バリアンさんはびっくりしたんだよ。
「凄いですね」
「俺も最初に見た時は驚いたよ。魔法での狩りなんて、ルディーンがやっている所しか見た事が無いからな」
「普通はそうでしょうね」
魔法って覚えるのにお金がいっぱいいるから、使える人はみんなお金持ちだもん。
森で狩りをするなんて危ない事するはずないから、イーノックカウにも魔法を使える人はいっぱいいるはずなのに魔物を魔法でやっつけた事がある人はいないんだってさ。
「でも、高価なブレードスワローが狩れるとなれば、森に来ようと考える人も現れるんじゃないでしょうか?」
「いや、それは無いだろ。ブレードスワローを探すという事は、森の中を歩き回るという事だからな」
森の中には人を襲う動物や魔物がいっぱいいるでしょ?
だからお父さんは、お金持ちの魔法使いがブレードスワローを探して森の中を歩き回るなんてできるはずがないって言うんだよ。
「なるほど。グランリルの狩人であるルディーン君だからこそ、ブレードスワローを狩れると言う訳ですね」
「まぁ、それだけでも無いんだがな」
「えっ?」
バリアンさんは、いっつも森に行ってる僕だからブレードスワローを狩れるのかって納得したみたい。
でもね、お父さんがそれだけじゃないんだよって言ったもんだから、どういう事? ってお顔をしたんだよ。
「それはどういう……」
「もう! お父さんたち、お話はそれくらいにして!」
だからその事を聞こうとしたんだけど、早くブレードすわるーが見たかったのか、キャリーナ姉ちゃんが怒っちゃったんだ。
「ねぇ、ルディーン。きれいな鳥はどっちにいるの?」
「えっとねぇ。あっ、あっちの方にいるみたい」
「あっちだね。お父さん、早く行こっ!」
でね、僕にブレードスワローはどっちの方にいるの? って聞いてきたもんだから、僕は魔法で探して木にとまってる一番近いとこの方を指さしたんだよ。
そしたらそれを聞いたキャリーナ姉ちゃんは、早く行こうってお父さんの手を引っ張ったんだ。
「おお、そうだな」
「えっ? カールフェルトさん、今のは?」
だからお父さんも慌ててうなずきながらそっちに歩き出したんだけど、バリアンさんはその状況についてこれなかったみたい。
何が起こってるの? ってお父さんに聞いたんだけど、お姉ちゃんに引っ張られて先に行っちゃったもんだから僕が代わりに答えてあげたんだよ。
「あのね、僕が魔法でブレードスワローの居るとこを探したんだ。だから飛んでっちゃう前に、早く行かないとダメなんだよ」
「魔法で探す? ああ、そう言えばそこにいる子たちを助けた時もそんな事を言っていたな」
僕が魔法でブレードスワローを探したんだよって教えてあげると、バリアンさんは一瞬、へっ?ってお顔をした後、手をポンって叩いて、ああ、あの時のあれかぁって。
「なるほど、確かに攻撃魔法が使えるだけでブレードスワローが狩れるわけじゃないというのはそういう事か」
でね、攻撃魔法が使えるのだけがブレードスワローを狩れる理由じゃないって解って、バリアンさんはすっきりしたお顔でお父さんたちの後を追ってったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ロルフさんたちも多少は使えるのを見ても解る通り、イーノックカウにも多くの魔法使いがいます。
でも攻撃魔法を覚えているのは領主に仕えているごく一部だけで、それほど多く無いんですよね。覚えるだけでお金が結構かかるのに、使う場面が全く無いので。
なのでバリアンさんが言っていたみたいに、もしブレードスワローを狩れると解ったら森に行く人がいるんじゃないかというのは実を言うと有り得ない話だったりします。
いくらブレードスワローが高く売れると言っても、流石にお金をかけ、難しい魔法の発音を練習してまで狩りに行こうなんて誰も思いませんからね。